新区長、選挙公約を実行。練馬区立美術館「100億円超」の建て替え計画を白紙に

練馬区立美術館と貫井図書館で進められていた、大規模な建て替え計画。
2026年4月に就任した吉田健一区長が、これまでの再整備計画を白紙に戻し、現在の建物を有効活用する方針を打ち出しました。
美術館計画の見直しは、吉田区長が選挙で掲げていた公約の一つです。6月の記者会見でも「私の選挙公約の一つ」と説明しています。

そもそも、なぜ建て替える予定だった?

建て替えにも理由があります。
区は、施設の老朽化などの課題に対応するとともに、美術館・貫井図書館・美術の森緑地を一体的に再整備する計画を進めていました。
「まちと一体となった美術館」「本物のアートに出会える美術館」「図書館と融合する美術館」という構想がつくられ、2024年には基本設計まで完成していました。

ところが、工事費は100億円超へ

大きな問題となったのが、建築費です。
区が2025年に公表した資料によると、2024年11月時点の概算工事費は約109億円。
さらに工事を進めるための条件も厳しくなり、2025年度に予定されていた解体工事も見送られました。
そして2026年、区はこれまでの再整備計画を見直すことを正式に発表しました。

「白紙」にして、今の美術館を使う

今回の方針転換で注目したいのが、
「現在の建物を有効に活用する」
という考え方です。
建て替えをやめるからといって、老朽化などの問題を放置するわけではありません。
区は2026年度に建物の現況調査を行い、老朽化などへの対応を検討するとしています。

つまり、

全部壊して新しくするのではなく、今ある建物を調べ、必要なところを直して使えないか考える。
という方向への転換です。

吉田区長は、実際に美術館を見に行っていた

今回もう一つ興味深いのが、吉田区長自身が現場を確認していることです。
就任会見では、美術館には以前から何度も訪れていたと説明。
さらに6月の記者会見では、美術館と図書館へ改めて足を運び、バリアフリーやトイレなどの問題を「自分の目で確認してきました」と話しています。そのうえで、改修すれば十分使えるとの考えを示しました。

書類上の築年数や計画だけではなく、

実際に現場を見る。
問題点を見る。
そのうえで、本当に建て替える必要があるのか考える。

練馬チャンネル。では、この判断のプロセスにも注目しています。
もちろん、目視だけで建物の寿命や安全性を判断できるものではありません。だからこそ、これから専門的な現況調査が行われます。

「古いから建て替える」だけが答えなのか

ここからは、練馬チャンネル。として考えたいことです。
建物は、新しく建てた瞬間から少しずつ歴史を積み重ねていきます。世界を見れば、ルーヴル美術館はもともと要塞として始まり、王宮として使われ、現在は美術館になっています。建物そのものが、800年以上にわたるフランスの歴史を伝える存在です。もちろん、ルーヴル美術館と練馬区立美術館を単純に比較することはできません。
それでも、美術館という場所を考えるとき、
作品だけではなく、建物にも時間が宿っていく。
そんな視点があってもいいと思います。
練馬区立美術館も1985年の開館から40年以上。
ここで初めて美術作品を見た人もいれば、子どもを連れて訪れた人もいる。
中村橋の風景として見続けてきた人もいます。
何でも新しく建て替えるのではなく、今あるものを生かしながら、新しい価値を加えていく。
今回の方針転換は、そんな公共施設のあり方を考えるきっかけにもなりそうです。

白紙にして、終わりではない

そして重要なのはここからです。
岩瀬たけし区議は9月16日の決算特別委員会で、建て替え中止後の美術館について質問。
区は、2026年10月から2027年3月にかけて現況調査を行う予定で、見直し案について改めて区民の意見を聞く方針を示したと岩瀬区議は報告しています。
さらに、係長級学芸員の配置や、作品収集の基本的な考え方についても検討が進められています。
岩瀬区議自身も今回の建て替え中止を評価する立場から、その後の美術館について詳しく発信しています。

岩瀬たけし区議「練馬区立美術館 建替え中止後の充実を!」

建て替えをやめて、いくら削減できるのか。
既存の建物を直すために、今度はいくら必要なのか。
そして、今の美術館を残しながら、どこまで良い美術館にできるのか。

今回の公約実行はゴールではなく、スタートです。
練馬チャンネル。でも、これからの動きを追っていきます。

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