白石農園とは?練馬で350年以上続く農家。「畑を地域に開く」農業が面白い

練馬区大泉町に、350年以上続く農家があります。
「白石農園」さんです。

江戸時代から続く農家と聞くと、昔ながらの農業をずっと守っている農家さんなのかなと思いました。
ところが調べてみると、むしろ逆。

約100種類の野菜を育てる。
地域の人が農業を学べる体験農園をつくる。
子どもたちを畑に呼ぶ。
学校給食や子ども食堂へ野菜を届ける。
福祉作業所とも一緒に仕事をする。

350年以上続く農家さんが、時代に合わせて「農業でできること」を広げ続けています。

白石農園さんとは、どんな農家なのでしょうか。
調べてみました。

白石農園は練馬・大泉町で350年以上続く農家

白石農園さんがあるのは、練馬区大泉町。
公式サイトによると、江戸時代から350年以上にわたって練馬で農業を営んできました。

現在の代表は、白石好孝さんです。

農林水産省の資料によると、農地の面積は約1.4ヘクタール。
露地やハウスなどを使い、年間を通して約100種類もの野菜を生産しています。

野菜は近隣のスーパーやJAの直売所、飲食店などへ届けられるほか、農園でも販売されています。
東京23区の住宅地の中にありながら、今も現役の「生産の場所」です。

でも、白石農園さんが作っているのは野菜だけではない

ここからが面白いところです。
白石農園さんについて調べていると、「何を作っているのか」だけでは、この農園のことを説明しきれないことに気づきました。
象徴的なのが、農業体験農園「大泉 風のがっこう」です。
一般的な市民農園は、区画を借りて自分で好きな野菜を育てるスタイルが中心です。
一方、「大泉 風のがっこう」では、農家さんが利用者に栽培方法を教えます。
種まきや苗の植え付けから、間引き、草取り、そして収穫まで。

畑だけを貸すのではありません。
農家さんが持っている「野菜を育てる技術」まで地域の人に伝えています。

125区画の畑に、地域の人がやってくる

農林水産省の資料では、「大泉 風のがっこう」は125区画。
1区画は30平方メートルです。

そこで利用者は、農家さんから教わりながら年間約30種類の野菜を育てています。
これは農家さんにとっても意味があります。
利用者が事前に年間の利用料を支払うため、農家さん側は収入の見通しを立てやすくなる。
一方、利用者はプロの農家さんから教わりながら、本格的な野菜づくりを体験できます。
農地を残すことと、農業経営を続けること。
その両方を成立させる仕組みになっています。

子どもたちも畑へ。年間約1,000人を受け入れ

白石農園さんの畑にやってくるのは、体験農園の利用者だけではありません。
農林水産省の資料によると、練馬大根の生産体験、社会科見学、職場体験などを通して、年間約1,000人の小中学生を受け入れてきました。
さらに、学校給食や子ども食堂への食材提供も行っています。
スーパーに並んでいる野菜を見るだけでは、野菜がどんな土で育ち、誰が育て、どうやって収穫されているのかはなかなか分かりません。
でも、街の中に畑があれば、実際に見ることができます。
東京の中に農地がある意味は、「野菜を作る場所」というだけではないのかもしれません。

アスパラは福祉作業所と一緒に届ける

さらに白石農園さんでは、農業と福祉を組み合わせた取り組みも行っています。

代表的なのが「東京アスパラ」です。
アスパラガスを育てるのは白石農園さん。
収穫したアスパラの選別や梱包は、練馬区社会福祉協議会が運営する「かたくり福祉作業所」が担当します。

役割を分けることで、白石農園さんはアスパラの栽培管理に集中できる。
一方、福祉作業所では利用者さんの仕事が生まれます。
白石農園さんは、この取り組みについて、障がいの有無にかかわらず、誰もが「支える側」にも「支えられる側」にもなれる地域づくりにつなげたいとしています。

野菜を作って売るだけではなく、農業を使って地域の仕事までつくっています。

白石さんが大切にしている、ある言葉

白石農園さんについて調べていると、白石好孝さんの考え方がよく表れている言葉を見つけました。

“If you build it, they will come.”

映画「フィールド・オブ・ドリームス」に登場する言葉で、日本語にすると「それをつくれば、人はやってくる」という意味です。

2026年に公表された白石農園さんの農福連携についての研究報告では、この言葉が白石さんの信念として紹介されています。

白石さんにとっての「それ」は、単なる畑だけではありません。

体験農園。
直売所。
農家レストラン。
農業を通じた福祉の場。

農業を中心に、人が集まる「場所」をつくっていく。

実際に白石農園さんには、子ども、学生、会社員、高齢者、地域の農家さんなど、さまざまな人が集まっています。

350年以上続く農家が、畑を地域に開いた

白石農園さんを最初に知ったとき、一番すごいのは「350年以上続いていること」だと思いました。

でも調べ終わると、少し印象が変わりました。

もちろん350年以上続いていることはすごい。
ただ、それ以上に面白いのは、昔からある畑を守るために「昔と同じことだけを続けていない」ことです。

直売する。
地域の人に農業を教える。
子どもたちを受け入れる。
収穫そのものを体験にする。
福祉と農業をつなげる。

時代に合わせて、農地の役割を増やしています。

350年続く農家が、畑を地域に開いた。

白石農園さんの取り組みを見ていると、そんなふうに感じます。

なぜ練馬に畑を残すのか

練馬区を歩いていると、住宅街の途中に突然畑が現れます。

「ここもいつか住宅になるのかな」と思ってしまうこともあります。

でも白石農園さんについて調べると、農地には野菜を生産する以外にも、いろいろな役割があることが分かります。

食べ物を作る。
子どもが学ぶ。
地域の人が集まる。
仕事を生み出す。
農業そのものを次の世代へ伝える。

東京に農地が必要なのか。

その答えは一つではないと思います。

ただ、350年以上続く白石農園さんの畑を見ていると、「畑があるから生まれているもの」が想像以上に多いことに気づきます。

練馬に残る農地について、もう少し知りたくなりました。

コメント